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ブッ壊れたシャワーヘッド

好きなものを、不規則に撒き散らすだけ

16/06/10 唐組第57回公演 改訂の巻「秘密の花園」@花園神社境内特設テント

ずっと赤テントの演劇は一度は生で見たいと思っていたので、ちょうど縁があって秘密の花園、見に行けました。唐組の中でも、毎度お世話になってる本多劇場こけら落とし公演の演目でもあったこの秘密の花園を見ることになったのはありがたや。

劇のワクワク感もさながら、やっぱ唐組の醍醐味はあの赤テント。開場時間が近づくにつれて演者さんたち含めスタッフさんがお客さんに整列を促し始め、履物を入れる袋を手渡された私たちはとにかく自由席のテント内へ。テントは見た目よりも収納がよくて、どんどんお客さんが吸い込まれていくのが不思議なほど。

私は整理番号はかなり後ろであったものの、最終的には舞台下手側のかなり前列まで詰め寄ることができて。でも仕事帰りに行ったこともあって座布団がなく、地べた座りの結果終始お尻と足が痛かったです(笑)あの赤テント特有の密集感と蒸し暑さもまたリアリティがあっていいんだよね。

 

 

ではざっくりあらすじ。閉じます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台は日暮里坂多き街。一介のサラリーマンアキヨシは、その日暮里の古い古いアパートに住むキャバレーホステスの一葉(いちよ)に毎月自分の給料袋を届け、そしてその給料は一葉の旦那大貫に取られている。アキヨシと一葉は愛し合っているもずっとプラトニックな関係を保っており、その関係をなぜか一葉と一緒に暮らしている大貫も容認しているという奇妙な三角関係。アキヨシと一葉は前世から結ばれている運命だとお互い信じているほど固い絆を感じているが、それはアキヨシに訪れる縁談話と、それに伴う関西への転勤話によっていとも簡単に突然別れが訪れる。一葉はそれを聴いて「お幸せにね」と送り出すも、トイレに席を立ってからしばらくしても帰ってこず、あわててアキヨシが家の外にある便所へ探しに行くと、そこには首をつって変わり果てた姿の一葉がいた。

そこからめくるめく妄想と夢の世界。首をつったのは本当に一葉なのか、それとも実はそれも妄想で、本当はそこにいたのはかつて幼き頃はぐれてしまった実の姉双葉(もろは)なのか。アキヨシが本当に愛したのは人妻の一葉なのか、それとも姉弟愛を超えるような愛を抱いていた姉の双葉なのか。まるで脳内に潜む天使と悪魔かのように自分に語りかけてくる一葉と双葉。その両方に応えるかのように、葛藤を経たアキヨシが自身の結婚指輪を菖蒲の葉に通すと、夢から覚めたように赤テントの幕がはがされ、花吹雪の中、一葉がアキヨシを求めて闇をさまよっていくのだった...

 

 

 

 

 

私史上一番はしょったあらすじではありますが、ご覧のとおり、よくわかりません

でも多分だけどこの作品については、というか唐作品についてはそれが正解で、全体のストーリーそれ自身に大きな意味があるわけではなくて、でもあの畳み掛けるような膨大かつ詩的なセリフ、場面場面の人物同士の会話、そして赤テントという特殊な舞台だからこそ表現できる演出、それらが醸し出す淫靡的で幻想的な世界観が唐組であり秘密の花園なのかなぁと。*1

 

テーマ曲のように全編を貫くのは岩崎宏美の「すみれ色の涙」。「さみしかったからあなたを愛して、淋しかったからあなたを憎んだ」というこの歌詞こそがまさに一葉、双葉、そしてアキヨシのこの悲劇の始まりを表してるんだと思います。ラジカセで流しているかのように少しかすれた音楽が、話の転換のたびに前兆なくいきなり大音響で流れてきて演者のセリフを強制的にも遮るところも、これまたアングラっぽくてゾクゾクしました。でもお客さんの中にかなり若い人(かくいう私も別にそんな年取ってない)が沢山いたけど、この曲そもそも知ってるのかな...?

 

若いといったら、演者さんも若かった...!唯一不満な点でもあるんだけど。演者さんが若い分には問題ないんだけど、多分メイクも自分たちで施してるんだろうね、若い演者さんのメイクがあまりにも現代的で、このストーリーの要にもなる「昭和の日暮里」という流れにあまりにもそぐわなくて、毎回そのせいで現実に引き戻された感じはありました。みんな顔立ちも現代風の美男美女なんだから、メイクだけでも工夫すればいいのになぁと。

一方で、藤井由紀さんがさすがすぎた...一葉の内に情熱を秘めるも靭やかで穏やかな様子、転じて双葉のときは妖艶で饒舌な悪女っぷりを熱演。ストーリーが進むにつれて、アキヨシだけでなく私たちもそのうち今目の前にいるのが一葉なのか双葉なのかわからなくなっていく混沌さ。それを本当に微笑み一つ、声色一つで演じ分けてた姉さんがとってもチャーミングでした。かなり体も張っていらしてて。

最後のシーンで、赤テントの舞台側の幕が全てとっぱらわれて、突き抜けの夜空が視界に広がる中、姉さん演じる一葉(多分一葉の方)がトイレで首をつったときと同じ真っ白無垢な洋服で颯爽と現れ、そして悲しそうな一瞥を残したあと去っていく姿が今でもずっと脳裏に焼きついていて、あぁこれは箱では表現できない余韻なんだなぁと思った次第です。

 

とにかく、普段なかなか体験できないアングラチックな演劇体験を経験させてくれた唐組公演。演出の水は飛んでくるし、熱演の演者の汗や唾は飛んでくるし、なにより2時間暑い中地べた座りでなかなか体力的にもくるものがありますが、それ以上の臨場感と独特な雰囲気を味わわせてくれるのが唐組の魅力だと思います。最後のシーンだけでもこれをテントで見る価値があるかな。

 

 

 

*1:そう言う意味でもビニールの城、見に行きたかったなぁ