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ブッ壊れたシャワーヘッド

好きなものを、不規則に撒き散らすだけ

16/07/20 パルコプロデュース BENTーベントー ソワレ@世田谷パブリックシアター

もはや半年以上空いてしまったので記憶があやふやどころの問題ではないですが、せっかく下書きで温めてたので出してやりたいと思います。

書き始めてから今まで、本当にこの半年はいろいろあったなぁ...(遠い目)

 

前のエントリーで触れたか覚えてませんが引っ越しました。一身の都合上、生きててこのかた引越しばかりしてますが*1、今回は北の大地に初上陸っちゅーことでここんとこは本当にばたばたしてました。だからブログが滞ってたのかと思った方、間違いです。私がずぼらなだけです。すみません。なお、今回は仕事の都合できてるのでしばらくいると思います。V6きたえーるとか来て(迫真)

 

 

 

さてそんな感じで絶賛ビニールの城は見逃しましたが、都内在住のうちに行ける舞台いっとこということで仕事終わりにBENT観劇ぶち込んできました。見れて本当によかった!!未だに引きずってる節があるくらいとても重たい作品だったけど、見ているときは息つく間もなくストーリーに引き込まれたし、なによりマックスとホルストのセリフが素敵。元は朗読劇だったそうですが、翻訳劇にありがちな用語の違和感もあまり感じることなく、登場人物も少ない中、流れるような長ゼリフで役者さんたちは大変だったかと思いますが、臨場感溢れてすごく胸を打たれました。なにより佐々木・北村ペアの迫力よ。特に北村さん演じるホルストの内にひしめく情熱と深い愛情には涙がこぼれそうになりました。というか実際家帰ってパンフ読み直してたら感傷に浸ってちょっと泣いた。

長丁場のツアーも無事完走したみたいで本当によかった。キャストの皆さん、スタッフの皆さんお疲れ様でした。さすがに今のメディアでまくり~な佐々木さんはもう自分の髪の毛なのかな?坊主頭もお似合いでしたけどね。

 

 

 

では以下盛大なネタバレなので一旦たたみます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりしたあらすじ:

 30年代のドイツ・ベルリン。世間体や暮らしやすさよりも自分の欲望や快楽に忠実なマックスは夜な夜な恋人のダンサー・ルディが働くクラブで飲み、そして記憶が飛ぶまで酔っては好みの男を家にお持ち帰り。翌朝仕事から帰ってきた恋人に呆れられるという堕落的な生活を送っていた。

 この日マックスは金髪のマッチョな若いイケメン・ウルフを連れて帰っていたのだが、案の定どういう経緯で知り合って連れて帰って関係を持ってしまったのか全然思い出せない。いつものようにマックスとルディの間で口喧嘩が始まるが、突然家にナチスの親衛隊がなだれ込み、指名手配犯と称してウルフを殺したのだ。実はウルフはナチス関係者の愛人で、同性愛者であることが知れ渡り、命を狙われていたのだ。マックスとルディは間一髪で逃げ出しルディの働くクラブに逃げ込んだが、そこで彼らはナチスによる同性愛者狩りが既に幕開けしていることを知り、国内のホームレステントを転々とする長い逃亡生活が始まった。

 マックスはルディを連れてアムステルダムへ越境し逃亡することを試み、自身も同性愛者でありながら、それを隠すため結婚し子供を設け世間体を整え逃げ延びている伯父フレディに助けを求めるが、彼は甥っ子マックス一人分の汽車代と偽造パスポートしか用意してくれなかった。マックスは二人で逃げることを決めていたため泣く泣く断り、なんとか日雇いの賃金を貯めて越境を成功させようとするも、ルディの油断によりとうとう二人はホームレスたちと暮らす森のテントでナチスに捕まえられてしまう。

 

 強制収容所行きの列車でルディはめがねをかけているという理由だけでナチスから理不尽な拷問を受け、しかもその様子をあえてマックスに見せた。それを見て動揺したマックスに対し、同じ車両に乗り合わせていたホルストは「収容所では己しか頼ってはならない」と制止した。同性愛者を示すピンクの星をつけさせられていたホルストによると、収容所での同性愛者の地位はユダヤ人より低いという。それを聞いたホルストは泣く泣くルディを見殺しにし、生き延びるために尊厳を捨ててナチスとの「取引」に応じ13歳のユダヤ人少女を死姦。同性愛者でないことを「証明」して、ユダヤ人であることを表す黄色い星を手に入れ、最低階級をまのがれた。

 収容所に入ったあとも、マックスはナチスと様々な「取引」を行うことで、所内でも単調だが比較的安全な「石運び」の仕事につき、またそこへ列車にいたとき自分を助けてくれたホルストを呼び寄せた。彼らの働きは常に監視されていたが、距離的な問題でナチスに見られにくい「会話」という手段を通じて、マックスとホルストは徐々にお互いの心を通わせていった。彼らは「言葉でナチスに、偏見に打ち勝った」のだ。

 

 ところが厳寒の冬を経て咳が止まらなくなったホルストに、マックスが再度「取引」を経て薬を手に入れてあげたところ、その薬の用途がナチスにバレてしまい、ホルストナチスに「死」を意味する「高圧電線を越えての帽子取り」を命じられる。ホルストはなにかを覚悟した表情を浮かべ、かつてマックスと約束していた「愛してる」を意味する眉を触るジェスチャーをして高圧電線にぶつかり死んだ。ナチスにその死体処理を命じられたマックスは死んで初めて愛するホルストの身体を抱きしめることが叶った。命じられたとおり死体を安置したマックスは、ホルストが着ていたピンクの星がついている上着を脱がせて自ら羽織り、躊躇することなく自ら高圧電線へと足を運んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 ユダヤ人迫害についてはいろんな映画や小説等でも題材とされ、おそらくみなさんも一度はなにかの形で触れたことがあると思います。

 でも実は意外と知られていないドイツのホモフォビア的な歴史。まぁドイツに限らないとは思いますが。むしろ限らないからこそ、強制収容所に入れられた彼らはナチスからの恣意的な虐待の対象になっただけでなく、同じ収容された囚人同士たちからも、それこそユダヤ人からも偏見の目で見られることが多く、文字通り底辺な扱いを受けた方も少なくないといいます。

 

 BENTは正にその層に焦点を当てた作品なのですが、まずはその強制収容所における扱いの酷さに胸が痛むのなんの。ユダヤ人より与えられたベッド数が少なく、夜はすし詰め状態で雑魚寝。ご飯の順番もほかの囚人に割り込まれて自分の番が回ってきた頃にはほとんどなくなっており、一番「楽」と言われる石運びの仕事も、真夏真冬構わず一日12時間、ただひたすら石を右から左へ、左から右へ運ぶだけ。2時間に一度の休憩も座ることは許されず、無意味な仕事。とにかく人権もなにもなくて、当時はそういう倫理観のもと行われていた非道的行為なのかもしれないけど、今の平和な世界に住んでいる私にとっては共感できる部分がなにもなくて。

 それでも、100%の絶望だけを味わわなくて済んだのは、やはりホルストのあの芯のある強さと人間としての暖かさがあったからじゃないかな。どんなに苦しくて、回りのあらゆる人に虐げられても、最初から最期まで「嘘偽りない本当の自分でいること」を全うし、胸にピンクのトライアングルをつけて生活し続けたホルストは、一見ぶっきらぼうだけど優しさと思いやりに溢れていて。でも彼だって愛に飢えていた。だから、拷問のような作業の合間にマックスと会話を通して交わったあと、力強く一言「俺たちは勝ったんだ、ナチスに。言葉だけで打ち勝った」と言ったとき、その人としての強さと同時にホルストが今まで抱えた孤独とさみしさにも触れたような気がして、余計胸を打たれました。

 

 ストーリーは基本マックスの視点から語られるため、私たちもマックスの心情の変化を感じ取りながら話を追うことになります。最初はあんなに放蕩で自由で自分勝手な生き様を見せていたマックスも、また、時代の流れとともに現実を突きつけられその弱さをあらわにし、そしてルディを失い、ホルストと出会うことでまた強くなります。

 はっきり言ってマックスはとても強かな男です。はじめから自分の快楽に忠実だし、そのためならなりふり構わず恋人を家族を傷つける。ナチスに捕まってからも自分が生き延びるためとはいえ恋人を見捨て、またいろいろな取引にも手を出します。その取引の内容がエグいのなんの。ユダヤ人少女の死体を死姦してゲイではないことを「証明」するとか、同性愛か分からないけどナチスの軍人と寝たりとか、何で得たかも分からない現金を袖の下で渡すとか。他にも詳細が触れられていない取引の数々。

 でも、完璧な善人ではないからこそリアリティがあるし、人間味が増して共感できる。そんなマックスがホルストに出会って徐々にその人間的な弱さを脱ぎ捨てて、現実を受け入れながら「愛」を纏って強くたくましくなっていく様子が、さらに結末の悲惨さを引き立てている気がします。

 

 また、北村さんと佐々木さんがセクシーのなんの。真夏に石を運ぶシーンでは二人とも暑さのため上半身裸になって労働に勤しむのですが、佐々木さんは完全に引き締まってて、それがマックスの色男感を増幅させててもちろんかっこいいし、でも北村さんのひょろいし適度に筋肉もついてるけどでも年齢も感じさせられるリアリティ満載な体型もこれまたエロくて。超ガン見。

 なにより、やっぱり二人の官能小説さながらの会話のみでのラブシーン。官能小説読んだことないけど。ホルストの「感じてみろよ」がきっかけでつかの間の休憩時間に始まるのですが、最初はあまり乗り気ではないマックスもホルストに誘導されることで徐々にその言葉の節々からホルストの愛を感じ、最終的にはホルストよりもノリノリになるという。そのシーンはとっても淫靡なのですが、どんなに言葉で相手を愛しても、指一本すら触れられないというのがまた切ない。

 だからこそ、最期の最期で、マックスがそっとでも力強くホルストの亡骸を抱きしめたとき、あまりの運命の残酷さに心が震える思いでした。

 

 新納さんの女装がかなり話題になってましたし、実際身長あって足綺麗で本当に美しかったのですが、個人的にはウルフ役とナチス軍人役を兼任していた小柳くんがすんごく印象に残りました。冒頭まっきんきんの金髪で出てきたウルフは、ちょっと甘えん坊な魅惑の男の子に見えつつも、でも正体不明の不気味さもある。また、体つきも筋肉がすごいので裸でマックスとルディの家の中をウロウロしてると目に毒すら感じる。でも、その後ナチス軍人として出てきた瞬間、ウルフの時の暖かさは皆無で、囚人護送のときはルディのめがねを奪ってとことん虐め抜くし、収容所でも最後までホルストとマックスを苦しめます。多分あの軍人はマックスが実はゲイでルディと恋人関係にあったことを知っていてあの仕打ちを受けさせたんじゃないかなぁ。とにかく憎々しいほど恐ろしい顔つきで、でも逆三角形の体型が軍服に身を包まれていてフェチにはたまりませんでした。

 

 精神的にかなり気が滅入る劇だったし、これを稽古期間含めかなり長期間のツアーで演じきった演者さんたちは本当にすごいと思います。私も一回見ただけでかなりエネルギーが消耗された気持ちになりましたが、一方でチャンスがあったらまた見に行きたくなるそんな舞台でした。

*1:数えてみたら11回目でした